以下のような方向けの記事です。
- ランニングシューズの構造が知りたい
- 各構造の役割が知りたい
- 各構造が故障やパフォーマンスにどう影響している?
ランニングシューズにはながーい歴史があります。
履いた時の快適さ、パフォーマンスの向上、障害や故障の軽減などが追求されて作られ、現在はさまざまな機能を持ったランニングシューズが開発されて販売されています😊
今回はランニングシューズの機能をシューズの構造に分けて報告している論文をひとまとめに集めた系統的レビューを読んだので記事にしてみました。
読んだ系統的レビューの原文はこちら。
Systematic Review of the Role of the Footwear Constructions in Running Biomechanics : Implications for Running-Related Injury and Performance
Journal of Sports Science & Medicine 2020 Mar; 19(1): 20-37
2020年にXiaole SUN氏ら(上海の方々)によって世に出されています。
1994年1月〜2018年9月までランニングシューズのバイオメカニクスに関する研究をデータベースから検索

方法は系統的レビューのガイドラインに従って1994年1月から2018年9月までのランニングシューズのバイオメカニクスの関する研究論文をデータベースから検索し1260の論文を特定。
この中から重複しているもの、バイオメカニクスに関係のないもの、ランニングシューズではないもの、英語ではないものなどを除外して125篇にまで絞る。
さらに、研究の質が担保されているもの63篇が最終的に選ばれています。
ランニングシューズの構造のうち、ランニング障害とパフォーマンスに影響するかどうか?を調べられている構造は以下の項目でした。
- シューズの紐(4篇)
- ミッドソール(19篇)
- ヒールフレア(1篇)
- 踵とつま先までの高さ heel-toe drop (7篇)
- ベアフットタイプ minimalist shoe(20篇)
- マサイベアフットテクノロジー(1篇)
- ヒールカップ(2篇)
- アッパー(2篇)
- bending stiffness 曲げた時の強さ(7篇)
結果に行く前にまずは自分の経験や印象から😅
シューズの紐は正直しっくりくればなんでもいい。ベルトタイプやジッパータイプは僕はあまり馴染みませんでした。故障やパフォーマンスには影響しないんじゃないかなというのが印象🤔でもシューズの紐が故障やパフォーマンスに影響するかもという着眼点を持って研究している方々もいるんだなと改めてランニングシューズの奥深さを感じました😊
ミッドソールはやっぱり重要。質の高い研究論文も19篇とその多さからもランニングシューズはミッドソールが故障やパフォーマンスに影響を与えそうな気が僕もします😊
ヒールフレアは特に故障にもパフォーマンスにも影響しないんじゃないかな😅自分はあってもなくても気にならない。論文数も多くないから影響するとは誰も思っていないのかな🤔
heel-toe dropは大きいと前傾姿勢がしっかりつくのでパフォーマンスには影響しそう。でも故障については科学的にデータが出ているのかな🤔
ベアフットタイプ・minimalist shoeはこの中で一番論文数が多い。ランニングの研究をしている人たちはベアフット系のシューズがパフォーマンスや故障にどう影響するのか気にして研究し世に発信している方々が多いみたいです。ちなみにminimalist shoeの定義は足の自然な動きの制限を最小限にして柔軟性が高く踵が低い、軽量な靴で動きのコントロールや安定性の機能がないシューズということだそうです。わらーちとかナイキフリーのようなシューズでしょうか。僕はあまり履いたことがありません😅
マサイベアフットテクノロジーは正直どんなものかわかりませんでした😅google先生で検索してみると特殊なソール構造で「自然な不安定性」を作って足部にいろんな刺激を入れて鍛えられるというようなコンセプトのシューズのようです。論文数は1篇。パフォーマンスや故障軽減に効果があるかどうかをこの1編で言えるのかはわからないし自分も履いたことがないのでわからない。
ヒールカップはあれば踵が安定してくれるのでパフォーマンスや故障には影響しそうな印象🤔
アッパーは蒸れるかもしれないけど完全防水とかの素材じゃなきゃパフォーマンスや故障には影響はないんじゃないかな🤔変に蒸れなきゃよしです。
bending stiffnessは反発に関わるだろうからパフォーマンスに影響が出そうな感じ。でも故障にはどうかな🤔影響するのかな?
以上が僕の印象ですが、どんなふうに結論づけられているのでしょうか?
結果はbending stiffness、ミッドソール、ベアフットタイプがランニングシューズの構造としてパフォーマンスや故障に影響を与える
ざっくりですが今回の系統的レビューではこの63篇の論文を吟味して以下のようなことがいえると結論づけています。
- bending stiffnessを上げる(もちろん限度はあり)とパフォーマンスアップにつながる
- ミッドソールは柔らかければ衝撃力と衝撃ピークまでの立ち上がり速度(loading rates)を減らす
- ミッドソールは厚ければ厚いほどクッション性は向上するが足底の感覚を鈍くする可能性がある
- ベアフットタイプのシューズはランニングエコノミーを向上させる可能性がある
- ベアフットタイプはアキレス腱の周りを強くするが、足関節や中足骨部の故障を増やすかもしれない
- シューズの紐、ヒールフレア、heel-toe drop、Masai Barefoot Technologies、ヒールカップ、アッパーに関してはランニングのパフォーマンスやランニング障害に影響しない(今回の系統的レビューでは明らかな影響を示せないという結果)
やっぱりbending stiffnessはパフォーマンスに好影響、ただランニング障害とは関連なしでした。
ミッドソールはパフォーマンス、ランニング障害ともに影響を与えるという結果でした。
heel-toe dropとヒールカップは影響するかなと思ったけど今回の系統レビューでは影響与えないという結果でした😅
ベアフットタイプは履いたことなかったのですが故障に注意すればランニングエコノミーの向上を狙うために使えそうです😊
今回のレビューを普段のトレーニングに役立てるには?
今回の系統的レビューを今後のトレーニングに役立てるにはどうするかですが、やはりランニングシューズはトレーニング目的に応じて使い分けが大事ということなのかなというのが僕の解釈です。
まずシューズ紐やヒールフレア、heel-toe drop、ヒールカップ、アッパーはあんまりパフォーマンスや故障には影響しないので個人個人の足の形、履き心地やお好みでOK😊
高いパフォーマンスを出したいポイント練習やレースでは反発強めのbending sitiffnessの強いシューズを選択。
脚が疲れていて疲労緩和目的の回復系jogの際にはミッドソール厚めのシューズを。
足底の感覚をしっかり感じたいjogの時はそこまで厚くないシューズを選択する。
ランニングエコノミーを向上したい時は土や芝生などでベアフットタイプのシューズを選択する。
まあ当たり前と言えば当たり前ですかね・・・😅
でも改めて経験や感覚ではなく測定可能な数値として示されるのは大事なことかなと思います。
最後に
今回はランニングシューズの機能をシューズの構造に分けて報告した系統的レビューを読んでみたので記事にしました。
パフォーマンスに影響を大きく与えるのはbending stiffnessとミッドソールでした。ランニング障害に影響を及ぼすのはミッドソール。ベアフットタイプはランニングエコノミー向上が狙えそうです。
トレーニングの目的に応じてランニングシューズを選択していくことが重要であり、これまでの経験や感覚を支持する内容だったと思います。
皆様のトレーニング目的に合わせたシューズ選択の参考になれば幸いです。
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